2007年12月11日火曜日

浅井被告有罪 学園私物化の罪は重い

学校法人浅井学園の経費流用事件で、理事長を十五年間務めていた浅井幹夫被告に実刑判決が下った。  札幌地裁が、四つの起訴事実すべてについて有罪とし、懲役四年六カ月を言い渡した。  大学学長も兼務する立場にありながら、学園をまさに私物化していた。モラルの乏しさ、教育者としてあるまじき犯罪行為にあらためて憤りを覚える。実刑判決は当然だろう。  同学園は一九五七年の法人設立以来、浅井被告の父親が初代理事長を務め、二代目が前理事長だった。その利己的行動をだれも止められなかった。  事件の主な舞台となった浅井学園大は「北翔大」に改称して再出発している。学校法人の責任者に実刑判決が下ったのは極めて異例だ。こうしたことが二度とあってはならない。  事件は大きく三つからなる。  まず、大学校舎の外壁工事で補強材を予定の十分の一しか使わなかったのに、予定通り実施したと偽って国の補助金を受け取り、被告の自宅の改修費などに充てた。背任と補助金適正化法違反の罪に問われた。  次に学園経費から前妻らの車のリース代を出した。さらに内縁の妻を学園関連会社が雇用したように見せて給与を支出した。これらは業務上横領罪にあたるとされた。  公判で浅井被告は、経費流用の実行役となった学園の元参与と元管財課長、建設会社社長との共謀を否定し、無罪を主張した。  実行役の三人はすでに執行猶予つき有罪判決が確定している。  判決は被告の指示や共謀、故意を認めた。学園の経営基盤を損ない、社会の信頼を揺るがした点も重視した。複数の教育機関を運営する学校法人理事長の多大な権限を悪用したことから、他の共犯者より「刑事責任は格段に重い」と判断したのは妥当だ。  関連会社でカラ雇用したとされ、業務上横領罪に問われた内縁の妻自身については、犯罪意図を知るのは困難だったとして無罪とした。  被告は隠ぺい工作もしていた。大学の外壁が、手抜き工事で耐震補強には全く効果がないものになった一方で、自宅の改修内容は極めてぜいたくだった。被告は学園側への被害回復も一切していない。こうした状況の悪質さも判決は考慮したのだろう。  重要ポストを親族やイエスマンで固めると、トップの暴走を止められないという、不祥事を起こした同族企業に通じる教訓もうかがえる。  判決を機に、理事会などのチェック機能を再確認してほしい。  浅井被告は九月の最終意見陳述で「学生や保護者らにご迷惑をかけたことは反省したい」と述べた。  学生には何の罪もない。学業やスポーツ、社会活動を温かく見守りたい。

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